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2025.6.10

フリーランス新法

2024年11月1日から施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(通称:フリーランス新法)は、フリーランスと発注事業者との取引における不公正な慣行を是正し、フリーランスの就業環境を改善することを目的とした重要な法改正です。
近年、働き方の多様化が進展し、フリーランスという働き方が普及し、フリーランスを含む多様な働き方を、それぞれのニーズに応じて柔軟に選択できる環境を整備することが重要になっています。一方で、フリーランスの約4割が報酬不払い、支払遅延などのトラブルを経験している他、そのうちの約6割が記載の不十分な発注書しか受け取っていないか、そもそも発注書を受領していない等、フリーランスが取引先との関係で様々なトラブルを経験していることが問題となっています(令和2年5月内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実体調査結果」)。これは、一人の個人として業務委託を受けるフリーランスと、組織たる発注事業者との間には、交渉力や情報収集力の格差が生じやすいことが理由として挙げられます。すなわち、「個人」たる受注事業者は「組織」たる発注事業者から業務委託を受ける場合において、取引上、弱い立場に置かれやすいのです。

そこで、事業者間の業務委託における「個人」と「組織」の間における交渉力や情報収集力の格差、それに伴う「個人」たる受注事業者の取引上の弱い立場に着目し、発注事業者とフリーランスの業務委託に係る取引全般に妥当する、取引の適正化/就業環境の整備に関する最低限の規律を設けるとの目的で、フリーランス新法が制定されました。

フリーランス新法の主なポイント

1. 報酬の支払期日の明確化と支払遅延の禁止
発注事業者は、フリーランスに対して報酬の支払期日を明確に定めることが義務付けられました。具体的には、フリーランスが業務を提供した日から起算して60日以内に支払期日を設定し、支払わなければならないとされています(第4条)。

2. 7つの禁止行為の導入
発注事業者は、以下の7つの行為を行ってはならないとされています(第5条)。
①受領拒否(成果物の受領を拒むこと)
②報酬の減額(正当な理由なく報酬を減額すること)
③返品(納品後に成果物を返品させること)
④買いたたき(市場価格より著しく低い報酬を設定すること)
⑤購入・利用強制(特定の物品やサービスの購入・利用を強制すること)
⑥不当な経済上の利益の提供要請(不当な金銭やサービスの提供を求めること)
⑦不当な給付内容の変更・やり直し(契約後に一方的に内容を変更させること)
これらの行為は、フリーランスの利益を不当に害する可能性があるため、厳しく規制されています。

3. 就業環境の整備義務
発注事業者は、フリーランスの就業環境を整備するため、以下の義務を負います。
①募集情報の的確表示義務:虚偽や誤解を招くような募集情報の提供を禁止し、正確かつ最新の情報を提供すること(第12条)。
②育児・介護等との両立に対する配慮義務:フリーランスが育児や介護と業務を両立できるよう、作業時間や場所の調整に努めること(第13条)。
③ハラスメント対策の体制整備義務:ハラスメント行為を防止し、相談窓口の設置や迅速な対応を行うこと(第14条)。
④中途解除等の事前告知・理由開示義務:契約を解除する場合、30日前までに予告し、理由を開示すること(第16条)。

4.違反した場合等の対応
発注事業者が上記の定めに違反した場合、公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができるものと定められています。(第8条、第9条、第11条、第18~第20 条、第22条) また、命令違反及び検査拒否等に対しては、50万円以下の罰金に処される可能性があります(第24条、第25条)。

フリーランス新法は、フリーランスの方々が安心して働ける環境を整備するための重要な法改正です。自身の権利を守るためにも、法の内容を理解し、適切に活用することが求められます。