法務コラム
離婚をするときにはどんな事柄が問題となるのか
1 現代では、3組に1組は離婚する時代だと言われることがあります。これは、最近の統計で、離婚件数が婚姻件数の概ね3分の1で推移しているためです。離婚をしたくて結婚する人はいませんが、とはいえ、離婚は誰にでも起こり得る法律問題の一つと言ってよいでしょう。
それくらい身近な法律問題でありながら、離婚をするときには、解決しなければならない事柄がいくつもあることも多く、場合によっては、弁護士からしても複雑で難解なケースもあります。
そこで、離婚をするときに問題になる事柄として何があるのか、その概要を説明したいと思います。
2 離婚原因
そもそも離婚する理由があるのか、という問題です。法律にはいくつか離婚原因として明確に書かれているものがありますが、もっともポピュラーなのは不貞行為でしょう。実際にも問題となることが多い離婚原因です。
それ以外だと、別居期間が長くなったことを理由にするケースがほとんどではないでしょうか。一般的には、3年から5年程度別居期間があれば離婚できると言われたりします。間違っているわけではありませんが、夫婦や家族の事情は千差万別、必ずこの期間別居すれば、という基準があるわけではありません。もっと短い期間で離婚が認められるケースもあれば、5年では足りないケースもあります。特に、典型的には不貞行為をした側ですが、有責配偶者となる当事者からの離婚請求は、かなり長い年月の別居期間が必要となる場合があります。
3 婚姻費用
多くの場合、離婚が成立するときには、既に夫婦は別々に暮らしています。この別居中に問題となるのが、婚姻費用です。簡単に言うと、収入が多い方は、収入が低い方に生活費を支払わなければならないという決まりです。
支払う金額は、お互いの収入から一律に算出できるように、裁判所が算定表という基準を定めています。こう言うと、婚姻費用の金額で揉めることはほとんどないように思うかもしれませんが、そんなことはなく、複雑な問題をはらむ事案がたくさんあります。
例えば、毎年のように収入が変動している場合はどう考えるのか、賃料収入のような不労所得がある場合はどうなのか、住宅ローンの支払いはどのように考慮されるのか、私立学校の学費はどうなるのか等々、一筋縄ではいかない問題がいくらでも出てくるのが、婚姻費用です。
4 親権
夫婦に未成年の子どもがいる場合には、必ず親権が問題になります。離婚前でも、夫婦が別居していれば、どちらが子どもの面倒をみるかということで紛争になることも多々あります。
親権は母親が有利、と言われることがありますが、実際にはそれまでの育児を主に担ってきたのがどちらなのかがもっとも重要です。ただ、子どもが小さかったり、育児の分担が同じくらいの事案では、事実上母親が有利になる傾向があるかもしれません。
子どもがある程度の年齢であれば、子どもの意向も重視されますが、実際の心情や現在の養育状況などについて、調査官という裁判所の専門家が聞き取りや訪問などの調査をすることになります。
5 面会交流
子どもに関連してもう一つ問題になるのが、面会交流です。夫婦が別居しているときに、一緒に住んでいない親と子どもが交流することですが、この点が大きな争点になることもよくあります。
一口に面会交流と言っても、頻度や時間、場所、方法など、具体的に決めなければいけないことが色々とあります。裁判所で解決しようとしても、細かい部分まで決めることができないため、なかなか痒い所に手が届く解決が難しい分野でもあります。
従前は月に1回程度の頻度で決められることが多かったように思いますが、近時は、月に2回程度の頻度で定められることも増えてきた印象があります。
6 養育費
未成年の子どもがいる場合、養育費も問題になりますが、多くの場合、婚姻費用とほぼ同じと考えて差し支えないでしょう。婚姻費用は結婚相手の分も含めた生活費ですが、養育費の場合は、子どもの分だけの生活費とイメージすると分かりやすいかもしれません。
7 財産分与
財産分与も、離婚にあたって大きく争われることの多い問題です。基本的な制度としては、結婚している期間に夫婦の努力で得られた財産を、夫婦で2分の1ずつ分けるというものになっています。
そのため、結婚前から保有していた財産や、夫婦の努力とは関係なく得られた財産、例えば一方が親から相続した財産などは、財産分与の対象になりません。しかし、結婚前から保有していた財産と、結婚後に得られた財産を明確に区別できないことはよくあります。また、財産分与の対象になることは間違いなくても、不動産などでは、その価値がいくらなのかが争われることもあります。
分与の割合も、必ず2分の1になるというわけではなく、問題になる点が数多く潜んでいると言えるでしょう。
8 慰謝料
離婚をするときに慰謝料という言葉が頭に浮かぶ人は多いのではないでしょうか。しかし、実は離婚について慰謝料が認められることが多いわけではありません。
慰謝料が認められる典型的なケースは、不貞行為があった場合です。この場合は、金額もある程度傾向が決まっており、予測しやすいところがあります。他にも、暴力によって怪我をした場合などは、慰謝料が発生するケースと言えます。ただ、こちらは怪我の程度や暴力の頻度などが千差万別なため、相場感のある金額があるわけではありません。
それ以外だと、なかなか慰謝料が認められるケースは少ない印象があります。
9 いかがでしたでしょうか。一つの離婚でも、上記のように数多くの問題が生じる可能性があります。そのため、他の分野と比べて、解決まで長い期間を要するケースも多くあります。一方で、お互いが合意をすれば、非常に短期間で解決できる可能性があるのも離婚の特徴です。
それだけに、具体的な行動に移す前に、弁護士へ相談しておくことをおすすめします。